Masahall Full Stack

マーシャルアンプとリッチー・ブラックモアとジョージ・リンチとスティーブ・ヴァイが大好きなマサハルのブログです。時々こっそりと過去記事を改訂しています。(笑)

70年代前半のフェンダーストラトキャスターとコピー(リイッシュー)品の違い

※今回は異常に長いです。果たして途中で脱落せず最後まで読めますかな?(笑)


1979年に購入したヤマハのSR400に始まり、トーカイSS40、フェルナンデス・リバイバルRST-50、フェルナンデス・バーニーFST-60などコピーギターを使い続けて40年弱。50の齢をこえて、ようやく本物フェンダーの75年のストラトキャスターを手にしました。(格安のガタガタ半ジャンク品でしたが)

本物志向の方はコピーモデルなど目もくれないし、コピーオンリーの人は本物を知ろうとしない。コピーに精通した上で本物を分解、理解した私が感じた違いなどについてまとめます。(偉そうで申し訳ありませんoyz)

まず最初に、どのコピーモデルが一番本物に近かったか?という話をすると、形状の正確さについてはやはり過去から絶賛しているリバイバルのRST-50が一番なのですが、正確さは今一つながら丸みを帯びたエッジ、浅いコンターなどの雰囲気では、70年代のバーニーのFSTが一番近かったです。

FST-60の記事

http://masahall-super-lead.hateblo.jp/entry/2016/12/25/134250

FSTはローズ指板がフラットなこと、ネック取り付けボルトの穴位置、ヘッドのライン、ボディのラインがちょっと違うことが残念ですが、ザグリの形状や手でエッジを落とした丸みのあるボディなど、実に雰囲気が良い。

3番手は80年代のトーカイのSSです。ただしボディが50sモデルと共通でコンターが深いのが今一つ。

総じて70年代のヤマハグレコにアリア(マツモク)、グヤトーン、フレッシャーなど初期のコピーモデルは形状が不正確で、ビザールギターと言っても良いくらい出来が悪いので興味はありません。ただ古いだけで価値がないのに「ジャパンヴィンテージ」とオークションに出している人を見ると、アホか?と思います。ましてや「ジャパビン」と略したり「貼りメイプル」「激鳴り」などと書いてあるのもはたいていゴミカスですね。

それに対して、80年代スーパーコピーモデルとしてしのぎを削っていたグレコのスーパーリアルSE500(グレコについては所有したことが無く記憶が薄いので事実誤認があるかもしれません)やトーカイSS40、フェルナンデスRST-50は、とても4~5万円の入門クラスとは思えないくらいどれも良くできていました。
ギターとしてコピー精度や工作精度は格段に向上したのですが、NCルーターで加工されたボディやネックの形状が型で作ったかのように均一で正確すぎるため、残念ながらオリジナルのようなアメリカンな雰囲気(悪く言えば大雑把でいい加減な雰囲気)は感じられません。オリジナルは手作業でエッジやコンターのサンディング加工をしてたので、もっとラフに不均一で丸みを帯びているんです。

そして一番大きな違いはボディのコンターの形状(広さ深さ)です。

 

オリジナルのストラトキャスターのボディ形状は大きく分けて3種類あります。

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左:1959年頃までのネックポケットが浅く(ボディ上側へネックの飛び出し量が大きい)、コンターが大きく削られた初期。

中、右:76年頃までのネックポケットが深くコンターは少し浅くなった中期(69年頃にテンプレートが変わりピックアップキャビティが少し角ばった形状に変わる)

77年以降、コンターがかなり浅くなりNCルーターによる自動加工に変わったため形状のばらつきが少なくなった後期。(写真なし)
中期までのテンプレート加工によるボディは、コンターやエッジのアールに関しては人が手作業でサンディングをしていたため、丸みや深さなど形状にバラツキが見られます。

詳しくはストラト本やネットで調べていただきたいですが、こちらのブログで分かりやすい写真を載せてかなり詳しく解説されています。
https://ameblo.jp/rockcont/entry-11207233138.html


コピーモデルは当然NCルーターで自動加工されますが、グレコ、トーカイ、フェンダージャパンは生産管理を容易にするためか、スモールヘッド期モデルと共通のコンターが大きい50s風のボディなので70sの雰囲気が無いのです。
それは現行フェンダーのUSAやメキシコのリイッシュー70sストラトも同じ傾向ですね。

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RSTは'59、'64モデルと区別して'76はコンターがやや浅くオリジナルフェンダーの中期に似ているボディを製作した点はさすがなのですが、人手によるサンディングの不均一な丸みが無いのが非常に残念です。

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フェルナンデスはトーカイが製造していた「石ロゴ」時代を除いてオリジナルに非常に近い雰囲気です。

 

ネック=ヘッドの形状はみなそれぞれ若干違うのですが、やはりRSTは寸法が正確で各部の曲線の形状が一番良く似ています。

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FSTはとても良い木材を使用していますが残念ながら、指板がフラット貼りでロゴ下の曲線がわずかに違う。

 

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90年代のフェンダージャパンは、明らかに長さが短くヘッド形状がおかしいです。ヘッド先端の円は少し小さく、2弦と3弦の間の下側のSTRATOCASERの文字の「ATOC」辺りクローシャン形状の凹んだ部分のアールとFenderロゴ部のふくらみが大きく、全体に下膨れ的な格好悪さと感じます。
さらにナットからペグ穴までの長さ(オリジナルはナット端-6弦ポスト中心の長さが40ミリ)が短く、ペグ穴の間隔も狭いのでディティールアップでシャーラーFキーを取り付けようとすると裏でひし形のカバーが斜めになってしまいます。

そしてネック取り付けねじの穴位置も違うので、オリジナルやUSAモデルとの互換性がありません。
近年になってペグ穴の間隔は改善されましたがヘッドの形はそのままなので、それはきっと故意=フェンダー本社の指示なのでしょう。オリジナルと同じ形にはするな、と。
普通の人は「フェンダーのロゴ」があれば良しとするのでしょうが、マニアな私はロゴより正確な形を好むので、フェンダージャパンは好きになれないのです。

なお、現行フェンダーのリイッシューClassic70sは曲線部の形状は悪くないのですが、やはりナットからペグ穴の距離が数ミリ短いようです。ローズウッド指板のモデルがフラット貼りになっていることから分かりますが、スモールヘッドのネックと母材を共通化しているからでしょう。
そう考えると少し前のフェンダージャパンがわざわざラウンド貼りのST71を製造していたのは称賛に値します。

パーツとしては、まずペグ。80年代のスーパーコピーは、なかなか工夫されていました。
ドンズバなものはありませんが、トーカイはFマーク(トーカイだからTか?)こそ無いもののバックのカバー形状が秀逸、フェルナンデスの「Fキー」はバックカバーはかなり違いましたがポストやノブは良い感じでした。

ブリッジは、80年代のグレコ、トーカイに使われていたダイキャストワンピースブロックのトレモロブリッジが良く似ています。
FSTはナローピッチだし、RSTはブロック前側(取り付けねじ穴の開いている部分)がやや短く不正確な形状なので、フェルナンデスはイマイチでしたね。
現代はフェンダーUSAもジャパンも部品共通化ですべてセパレートブロックにプレスサドルになってしまったのが残念です。


私は今までに、ネックだけ79年と74年のオリジナルフェンダーを手に入れていたのでその違いは分かっていましたが、ボディやアセンブリは初めてなので、新たな発見が多数ありました。

改めてネックについて語ると、オリジナルフェンダーは、S9シリアルの81年頃までは硬く良いメイプル材が使われており、弦を張っても反り具合が変わらずロッドを締めこむ必要はほとんどありませんでした。74年のネックは、Rが緩くなるよう指板の頂点を削ったりスキャロップ加工を施しましたが、びくともしませんでした。
それに対して国産コピーは木材のグレードが低いのか乾燥が不十分なのか、柔らかいメイプルが使用されていて、反りをトラスロッドで矯正するものが多かったです。(80年代初期のフェルナンデスRSTには固く良質な個体もありました。)


ボディは先ほど書いたコンターやエッジの丸み以外に、ラッカーのトップコート塗装の質感、塗装時にボディを浮かせるためにピンを打った穴・・それを埋めた痕が本物の風格を醸し出しています。


そして今回大きな違いを発見したのが、ピックガードアセンブリなどの樹脂パーツでした。

フェンダーオリジナルのピックガードとトレモロのスプリングキャビティのカバー(バックパネル)は、裏側が艶消しになっている、やや薄く柔らかい塩化ビニールの素材で出来ていました。あまり力を入れなくてもへにゃっと曲がりますし、ねじを強く締めこむと容易に歪みます。

国産や現代のリイッシューはそれより少し厚めでアクリル樹脂のように硬い物を使用しています。手で力を入れても少ししかたわみません。恐らく60sのセルロイド製を模したものと共通化しているせいだと思います。
ストラトキャスターの場合、ピックガードの硬さの違いはそのまま音に現れます。それほど大きな違いではないとはいえ、オリジナルフェンダー70sがトレブリーながらも耳障りな感じにならないのは、柔らかいピックガードの影響があるのかもしれません。

ノブは国産や現行品よりやや柔らかいナイロン樹脂で、角が丸く文字の大きさが小さいせいか、やや小ぶりに感じました。


さて、肝心の音=ピックアップはどうかというと、まぁ好き好きではあるんですが、フェルナンデスRSTのL5000Vintage(後のVS-3)ピックアップ搭載のギターが一番雰囲気が近いと思いました。しかしミッドハイにちょっと気になる硬さを感じるピークがあり、本物と比べてしまうとやや不満を感じます。それはアウトプットに使用された銅の単芯線やピックガードの硬さによるものかもしれませんね。


安い予算で本物に近いギターを作りたい場合、80年代の初期RST-50が素材としては一番優秀です。そのままでも十分ですが、一度ポリウレタンの塗装を剥がして、エッジを少しラフに削って丸みを出すとマニアが喜びます。再度ポリウレタンで下塗りを行い、ボディのトップコートとヘッド表面をラッカーで仕上げれば完璧ですね。木部は削らずラッカーフィニッシュだけでも良いでしょう。
塗装はやりたくないなら、初期RST-50の硬いネックを使ってFSTのボディを組むと良さそうです。(その際、すべてのねじ穴の位置をやり直す必要がありますので、地味に面倒な作業になりますが)

ピックアップはフェンダーのオリジナルがベストですが、コストパフォーマンスを考えると近年のフェンダーUSAのヴィンテージタイプ(US VINTAGE、57/62など)を載せれば良いでしょう。ピックガードはできるだけ柔らかいものを探してみてください。50sを模した薄い1プライの物が物理的には良い感じですが、見た目はねぇ・・・
中国製の安物が意外と良いかもしれませんよ。

 

以上、マサハルが発見したオリジナルとコピーやリイッシューの違いでした。

お読みいただきまして大変ありがとうございました。お疲れさま♪