新たなマーシャルとブースター
ご無沙汰しております。
通勤車の車検があったり、母の入院〜葬儀、長男の部屋探しで石川↔埼玉~東京を何度か行き来したり、ドタバタして更新が滞っておりましたが、その間、実はいろいろとやっていました。
ツイッターをチェックしている方はご存知かと思いますが、
'89年製1962ブルースブレイカーRi購入と小変更
トレブルブースター2号機を製作するも失敗
マーシャル修理
など・・・・順に記事をアップしようと思いますが、まずは予告編をご覧ください。
‘89Marshall Blues Breaker (5881 tube) and Handmade Full Range Booster ‘Honeby Skewes’ copy 1
台風が荒れ狂う中、自作ブースターを通してマーシャルを大きな音で鳴らしてみましたが、Deep Purple 初期のブラックモア・サウンドに一歩踏み込めたと思います。
HORNBY SKEWES TREBLE BOOSTER(コピー試作機完成)※音源追加
※最後に音源追加しました。
少々時間がかかりましたが、やっとトレブルブースター(以下TB)が完成しました。
まずは聴いてください。
77年のフェンダーピックアップを乗せたフェルナンデスFSTを、6550パワー管の74年のマーシャルスタックで鳴らしました。(夜なのでアッテネーター使用)
Honeby Skewes copy treble booster
1.TBなし
マーシャルフルアップの音です。ストラトらしいジャキジャキした音ですが歪が弱いです。
2.TBノーマルモード
トレブルというよりミッドレンジをブーストして、歪とバイト感が増していますね。VOXブライアンメイアンプのようなピーっという発振に近いハウリングもなく、耳障りな感じがありません。VOLノブでブースト量が調整できますが、これはVOL10の状態です。
3.TBフルレンジモード
スイッチを切り替えると、出力の100kΩ抵抗を外した音が出せます。リッチー大先生が行っていたモディファイですが、抵抗を外すとハイパス=ローカットが機能せず太い音になるので、結果的にほぼフルレンジブースターになると思います。(ケースのアースが不十分なせいか、ブーというハムノイズが目立つので要修理)
トレブルブースターというとトップエンドをブーストしてキンキン、シャリシャリのトレブリーな音になるような先入観がありますが、それは誤りです。
特に今回コピーしたHORNBY SKEWESについては、ノーマル状態でミッドレンジブースターであり、ブラックモア改造においてはストラトの トーンの細さを太く是正するフルレンジブースターと考えるべきでしょう。
なお、ネットで出回っている回路図は2種類あって、0.001uFと0.022uFのコンデンサが逆になっています。間違った回路で組んでしまうと、ローミッドのカットオフ周波数が高くなり、音が小さくなってしまうので、要注意です。(なぜ知っているかというと私自身間違ったからw)
NOSのオリジナルトランジスタ、マスタードのキャパシタ、カーボン抵抗など、当時に準じたオールドパーツを使いましたが、その効果がどれほどか確認するため、2号機は現在普通に流通しているパーツで組んで比較してみようと思います。
※アースを取ってノイズが小さくなったので、マーシャルのMG-10で鳴らしてみました。
1.ODチャンネルゲイン2の音です。ストラトらしいクランチですね。
2.TBのVOL5の音です。ちょっとカリっとしてきました。
3.TBのVOL10の音です。歪が増えます。
4.TBのフルレンジブーストモードです。低音が出てファットなトーンです。
クリーンチャンネルではトーンと音量の変化が分かりやすいです。
1.TBなし
2.TBノーマル
3.TBフルレンジ
リッチー大先生と最初のストラトキャスター その3※追記
※ドレインリースタジオの「リング・ザット・ネック」フィルムについては1969年初頭という記述(DPASのDVDレヴューにて)があります。それが事実なら1月のBBCセッションの録音時と考えられますが、5月からの2度目のUSカナダツアーのプロモーション用となるので、Sロビンソンの解説と相違する上に少々時間が空きすぎる気がします。また室内とはいえTシャツや薄手のシャツ姿なので、1969年初頭の真冬よりも1968年初秋のような気がします。
しかしギターのフレーズは1969年1月収録のBBCセッションに酷似しているので、69年説も捨てがたく、結論が出ないですね。(笑)
古い資料を確認していて、謎が解けました。
まずは時系列でここまでのおさらい。
①1968年8月:「The Book Of Tariesyn」レコーディング
②※新発見
ドレインリースタジオにて、カナダTV局がWring That Neckの演奏風景を撮影(Eクラプトン放出のテレキャスターネックのストラトとマーシャル200を使用)
③10月:ロサンゼルスフォーラム公演(ES335と黒ローズのテレキャスターを使用)
④12月:ニューヨーク公演中に68年の黒メイプルのストラトを入手
シングル「Emaretta/Bird Has Flown」レコーディング
⑤1969年1月:BBCラジオ「ヘイ・ボッパ・レ・ボップ/エマレッタ/リング・ザット・ネック/ヘイ・ジョー/イッツ・オールオーバー・ナウ」収録
「Deep Purple(III)」レコーディング
①「ストラトの音は確認できない」というMaster氏の研究結果を鑑みて再確認したところ、確かに全部ES335という結論となりました。
この時点では、まだストラトはレコーディングに使用されていなかったと言う事です。
②10年ほど前にDVDのDeep Purpleアーカイヴコレクションで明らかになった映像です。
Deep Purple Mark 1 perform Wring That Neck in 1968
ディープパープル研究家の第一人者であるサイモン・ロビンソン氏によるブックレットの解説をよく読むと時期は明言していませんが「セカンドアルバムの発売と共に初のアメリカツアーのプロモーション用のインタビューを撮影するため、カナダのTV局がドレインリースタジオに撮影隊を送り込んだ(要約)」とあります。
つまりあのフィルムは1968年10月より以前に撮影され、あのストラトは米国でクリームの前座を務める前に既に英国内で入手していたことになります。
さらにアルバムバージョンよりも曲の完成度がやや低いと感じるため、セカンドのレコーディング前のリハーサル(もしくは渡米直前のリハーサル)を収録したものと思われます。そしてアルバムの裏ジャケット写真もその時点で撮影されたものだったと思われます。
以下は私の推測ですが、あのストラトは撮影時のリハーサルで実験的に使っただけだったと考えます。
ネックの反りとオクターブずれのために、アルバムのレコーディング本番では使用せず、Jロードに譲ったということだったのでしょう。レコーディングの後に入手したのだとしても、同じ理由でステージでは使わなかったという事ですね。
そして、12月に新たに68年の黒メイプルのストラトを手に入れて、それ以降のレコーディングに使用したと考えます。
カナダTVのフィルムにしても、アルバムジャケット写真にしても、ごくまれな一時期をとらえたものであり、テレキャスターネックのストラトは、公式音源には残らなかった幻のギターだったのではないでしょうか。
リッチー大先生のサウンド変遷、MK-1末期→MK-2初期
今までMK-1のサウンドを確認してきましたが、ギブソンES335→フェンダーストラトキャスター、VOX AC30→マーシャルの変遷が、MK-2の初期すなわちインロックのサウンドにつながってゆくのです。
まず、MK-1とIn Rockをつなぐ音源をいくつか確認しましょう。
Deep Purple - Hallelujah - Beat Club - 1969
録音は1969年の6月7日、MK-1の曲調を引き継ぎつつ、Iギランのシャウトや、随所にJヘンドリクスのAll Along the Watch Tower風のギターが聴ける不思議な曲です。
ギターの音はDeep Purple IIIの延長線上ですが、The PainterやAprilなどと比べて歪やトレブルの出方が抑えられてより自然なトーンになっています。IIIが恐らくコントロールがMASTER VOL、BASS、TREBLEのみのマーシャル200(通称PIG)だったのに対して、回路が異なる1968年後半に発表されたスーパーリードと同じコントロールの1967Majorを使用したからではないかと考えます。
こちらはその2か月後、1969年8月22日のベルギー、ビルゼンのジャズフェスティバルの演奏です。
Deep Purple - "Wring That Neck" (Live at the Bilzen Jazz Festival 1969)
見て分かる通り、前半Wring That NeckではES335+(恐らく)VOX AC30、後半Mandrake Rootの17:50頃~ではストラト(指板Rをフラットに削り直しフレット打ち換え)+68年のマーシャルメジャーの組み合わせです。この歪の軋み方は、恐らくHSのトレブルブースターではないかと思いますが、先のハレルヤなどに近い音だと思います。
そしていよいよIn Rockです。
激しいアーミングで分かるように、ほとんどの曲でストラトキャスターを使用しています。しかしその音は先ほどまでと違い、ストラトに聴こえません。線が細く鋭くトレブリー、鈴鳴りといったストラトの特徴は全くなく、むしろハムバッカーのES335に聴こえるかもしれませんよね。
それには理由があって、アンプが違うのではないかという推測があります。VOXのAC30でも、マーシャルの200やメジャーでもない。
では何を使っていたのでしょうか?
(続く)
BURNのギターソロの謎
しばらく前にツイッターで披露したネタですが、タイムラインの彼方に行ってしまったのでこちらにまとめておきます。
第3期の名曲BURNのスタジオ版のギターソロにおけるテープ速度操作の疑いについて検証をします。
つまりマスターテープの速度を下げて(それに合わせてチューニングもダウンして)録音し、通常速度で再生するというものです。演奏の速度や弦のテンションが下がるので、早弾きが容易になったり、正確に弾けるようになりますが、再生音が妙にカン高い感じになります。
その疑いを持って聴くと、トーンはもちろん、ハマリングやプリング、アームヴィブラートの速さなど、確かに不自然な感じがしますよね。
Burn - Isolated Solo (Ritchie Blackmore)
どこまでダウンチューニングで行けるか試したところ、オリジナル音源を1音下げた辺りが限界でした。それ以上下げると弦がベロベロでかえって弾き辛くなります。
速度にしておよそ90%=10%遅くなるので、編集ソフトで勝手に速度を落としてみました。音程が下がると不自然ですが、奏法的にはかなり自然な感じになります。
再生速度89%の音源を作成し、1音下げて演奏して録音してみました。弾きやすくなった割にはあちこちタイミングが狂って弾けてませんが、ラフな1回録りですし、慣れない速度だとこれはこれで弾き難かったんです。(笑)
そこから118%に速度を上げて(速度、音程を元に戻して)完了です。ちょっと甲高い感じのトーン、ㇷ゚リングオフやハマリングオン、チョーキングとアーミングなど・・オリジナルのような雰囲気が出てきますよ。いろいろ妙な操作をしたので、音質が悪いのはご勘弁くださいな。
しかしリッチー大先生はなぜこんな面倒なことをしたのでしょうか?
大先生の技量をもってすれば、オリジナルの速度でもきっちり弾けないはずはないのに。
実に謎です。