リッチー大先生のサウンド変遷、MK-1末期→MK-2初期
今までMK-1のサウンドを確認してきましたが、ギブソンES335→フェンダーストラトキャスター、VOX AC30→マーシャルの変遷が、MK-2の初期すなわちインロックのサウンドにつながってゆくのです。
まず、MK-1とIn Rockをつなぐ音源をいくつか確認しましょう。
Deep Purple - Hallelujah - Beat Club - 1969
録音は1969年の6月7日、MK-1の曲調を引き継ぎつつ、Iギランのシャウトや、随所にJヘンドリクスのAll Along the Watch Tower風のギターが聴ける不思議な曲です。
ギターの音はDeep Purple IIIの延長線上ですが、The PainterやAprilなどと比べて歪やトレブルの出方が抑えられてより自然なトーンになっています。IIIが恐らくコントロールがMASTER VOL、BASS、TREBLEのみのマーシャル200(通称PIG)だったのに対して、回路が異なる1968年後半に発表されたスーパーリードと同じコントロールの1967Majorを使用したからではないかと考えます。
こちらはその2か月後、1969年8月22日のベルギー、ビルゼンのジャズフェスティバルの演奏です。
Deep Purple - "Wring That Neck" (Live at the Bilzen Jazz Festival 1969)
見て分かる通り、前半Wring That NeckではES335+(恐らく)VOX AC30、後半Mandrake Rootの17:50頃~ではストラト(指板Rをフラットに削り直しフレット打ち換え)+68年のマーシャルメジャーの組み合わせです。この歪の軋み方は、恐らくHSのトレブルブースターではないかと思いますが、先のハレルヤなどに近い音だと思います。
そしていよいよIn Rockです。
激しいアーミングで分かるように、ほとんどの曲でストラトキャスターを使用しています。しかしその音は先ほどまでと違い、ストラトに聴こえません。線が細く鋭くトレブリー、鈴鳴りといったストラトの特徴は全くなく、むしろハムバッカーのES335に聴こえるかもしれませんよね。
それには理由があって、アンプが違うのではないかという推測があります。VOXのAC30でも、マーシャルの200やメジャーでもない。
では何を使っていたのでしょうか?
(続く)
BURNのギターソロの謎
しばらく前にツイッターで披露したネタですが、タイムラインの彼方に行ってしまったのでこちらにまとめておきます。
第3期の名曲BURNのスタジオ版のギターソロにおけるテープ速度操作の疑いについて検証をします。
つまりマスターテープの速度を下げて(それに合わせてチューニングもダウンして)録音し、通常速度で再生するというものです。演奏の速度や弦のテンションが下がるので、早弾きが容易になったり、正確に弾けるようになりますが、再生音が妙にカン高い感じになります。
その疑いを持って聴くと、トーンはもちろん、ハマリングやプリング、アームヴィブラートの速さなど、確かに不自然な感じがしますよね。
Burn - Isolated Solo (Ritchie Blackmore)
どこまでダウンチューニングで行けるか試したところ、オリジナル音源を1音下げた辺りが限界でした。それ以上下げると弦がベロベロでかえって弾き辛くなります。
速度にしておよそ90%=10%遅くなるので、編集ソフトで勝手に速度を落としてみました。音程が下がると不自然ですが、奏法的にはかなり自然な感じになります。
再生速度89%の音源を作成し、1音下げて演奏して録音してみました。弾きやすくなった割にはあちこちタイミングが狂って弾けてませんが、ラフな1回録りですし、慣れない速度だとこれはこれで弾き難かったんです。(笑)
そこから118%に速度を上げて(速度、音程を元に戻して)完了です。ちょっと甲高い感じのトーン、ㇷ゚リングオフやハマリングオン、チョーキングとアーミングなど・・オリジナルのような雰囲気が出てきますよ。いろいろ妙な操作をしたので、音質が悪いのはご勘弁くださいな。
しかしリッチー大先生はなぜこんな面倒なことをしたのでしょうか?
大先生の技量をもってすれば、オリジナルの速度でもきっちり弾けないはずはないのに。
実に謎です。
続・リッチー大先生使用ギター当てクイズ : Deep Purple(III)
先日大失敗したのですが懲りずに挑戦です。
ここまでのおさらい。
1968年5月:「Shades Of Deep Purple」レコーディング
8月:「The Book Of Tariesyn」レコーディング
10月:ロサンゼルスフォーラム公演(黒ローズのテレキャスターも使用)EEクラプトン放出のテレキャスネックのストラトを入手?
12月:ニューヨーク公演中に68年の黒メイプルのストラトを入手?
シングル「Emaretta/Bird Has Flown」レコーディング
1969年1月:BBCラジオ「ヘイ・ボッパ・レ・ボップ/エマレッタ/リング・ザット・ネック/ヘイ・ジョー/イッツ・オールオーバー・ナウ」収録・・・テレキャスネックのストラト?
「Deep Purple(III)」レコーディング
つまり今回のネタこそ、ストラトとES335を併用している可能性が高いというワケですね。
1.Chasing Shadows
様々なパーカッションが大活躍、リズムが面白い曲です。
ワウをかけたシャープなシングルコイルのトーン、これぞストラトですね。
ES335の「タリエシン」全般と比べて、明らかにトレブリーというか痩せた感じの音です。
2.Blind
チェンバロ(ハープシコード?)の旋律が中心となるクラシカルな曲です。
ワウをかけて激しく歪んだソロはコンソール直入でしょうか?
ストラトっぽいけど判別不能でギブアップです。
3.Lalena
ハモンドオルガンがメインの抒情的なマイナーバラードです。ギターはクリーンなオブリガートという感じで、脇役に徹しています。
ES335の可能性が捨てきれないですが、エンディングのワウをかけた音の感じがストラトっぽく感じました。
4.Fault Line
ドラムはテープの逆回転ですね。ワウをかけた不気味なギターのメロディはシャープなアームによるヴィブラートから判断してストラトでしょう。
5.The Painter
一発録りのスタジオライブだそうです。
ワウはなし。微妙な歪がファズなのかトレブルブースターなのかよくわかりませんが、ストラトとマーシャル200の音のように思えます。
シャープなアーミングがストラトらしいですね。
6.Why Didn't Rosemary?
この音は2ndで散々聴きました。ストラトだと思い込んでました(笑)が、これがES335ですね。
7.Bird Has Flown
これまたいかにもという感じのストラト+ワウのサウンドですね。
アンプはマーシャルのような気がします。
8.Apri
アコースティックはさておき、前半テーマ部は「Why Didn't Rosemary?」と同じ音に聴こえますね。歪具合がコンソール直入のES335っぽいです。しかしオーケストラ後の後半テーマからは音がトレブリーに変わって、シャープなアームヴィブラートがかかるので、ストラトでしょう。そしてラストのソロでまたコンソール直のES335か?
といった感じです。パターンとしては主に
1.ストラト+ワウ+マーシャル200=ジャキジャキとトレブリー
2.ES335+ファズ+AC30=ハイミッドにピークがありハイエンドが出ていない
の2つと思われますが、コンソール直の音は正直言ってよくわかりません。
いずれにしてもこのアルバムでストラトがメインとなったわけですが、それでは、クラプトン放出のテレネックと新たに購入した黒メイプルのどちらを使ったのか?
何の証拠も無いので推測というか想像でしかありませんが、アルバムは黒メイプル、その前のBBCラジオセッションではテレネックを使ったと思います。BBCはそれと思われる映像が残っていることが推測の根拠で、試しに使ってみたもののネックの反りやオクターブが合わない不具合でアルバムでは使わなかったと考えました。あとまったく気のせいと思いますが、新品ギターのようにやや硬い音に感じたのも理由の一つです。
まぁそんな感じでお茶を濁してMK-1のサウンドについては終了します。(苦笑)
リッチー大先生と最初のストラトキャスター その2
※このギターの入手時期が判明したので、別記事にて訂正します。
1968年10月18日、クリームの解散公演の前座をしていたパープルのメンバーは、ロサンゼルスの2日目の公演を見に来たジミ・ヘンドリクスから、自宅でのパーティに招待されています。リッチー大先生がジミとどんな話をしたかは定かではありませんが、それによってよりストラトへのあこがれが強くなったことは間違いないでしょう。
テレキャスネックのストラトを入手した時期ははっきり分かりませんが、当時ツアー中だったため慣れないギターを敬遠したのか、その後1969年1月のレコーディングからスタジオで使われましたが、その後Jロードに壊されてしまったため(真偽のほどは定かではない)、ステージで使われることはなかったようです。
こちらは1968年(恐らく12月末)の最初のUSツアーのバックステージの写真ですが、背後にブラック/メイプルのストラトが置いてあります。詳しくは「RBギターズ」に書いてありますが、68年の12月のニューヨーク公演の合間に「マニーズ」で入手した可能性が高いということでした。ということはテレキャスネックのストラトとあまり違わない時期に入手したことになります。しかしこちらも不慣れなせいか、使われるまで(使いやすいよう改造されるまで)しばらく時間がかかりました。
※以下完全に妄想です。くだらない冗談が嫌いな方は飛ばしてください。
1968年10月18日、リッチー大先生はジミの自宅パーティに誘われて、ギター談義で大いに盛り上がっていた。
「・・・ところでジミ、あなたの最新型のストラトキャスターは実にカッコ良いですね」
「デカいヘッドにメイプル指板がイカしてるだろ。あれはオーダーしないと手に入らない仕様なんだ。俺はマニーズって店で買ったんだが、そこにあるかもしれないな。NYに行ったら寄ってみな」
この時、一緒にパーティに呼ばれていたクリームのEクラプトンは、会話から取り残されてこう思っていた。
(・・・畜生!俺の方が先にジミと知り合いだったのに、ジミに気に入られやがって・・・無名の前座のクセにステージでGODクラプトン様をコケにしやがって・・・リッチーなんか大嫌いだ・・・サポートから降ろしちゃおうっと・・・)
さて翌日、大先生はマニーズの番号を誰かに調べさせて電話。
「はい!毎度おおきに、マニーズです~!」
「ハロー、Mr.ジミ・ヘンドリクスに聞いたのだが、そちらにヘッドがデカいメイプル指板の新しいストラトキャスターはあるかい?」
「(お前誰だよ?)・・・はい、ヘンドリクスさんと同じ黒いのならありまっせ」
「わかった。そいつを買うよ。私はディープ・パープルのリッチー・ブラックモアだ。後はこいつと話をしてくれ。おいジェフあとは頼んだぞ」
ジェフ・ワード(ツアーマネージャー)
「私はテトラグラマトンレコードのジェフ・ワードと言います。そのギターですがうちのMr.ブラックモアがどうしても欲しがっているので売っていただきたいのですが
・・・(商談成立)・・・
では2か月後にニューヨークに行くので、その時にピックアップすることにしましょう」
「毎度おおきに~」
「・・・ブラックモアさん、ということで12月にNY公演があるのでその時に引き取りに行くことになりました」
「なんだと?!2か月も待たせる気か?このxxxx野郎!役立たずめ!!まったく腹立たしい」
「ツアーで常に移動しているから、送ってもらっても、タイムリーに途中で受け取るのは難しいんですよ」
「知ったことか!私はすぐ欲しいのだ!だが仕方ない・・・(そういえばエリックがテレキャスネックを付けたストラトをローディにくれてやったと言っていたな・・・)」
早速クリームのローディ、ミック・ターナー氏を捕まえて難癖をつける大先生・・・
「おいお前、テレキャスターのネックが付いたストラトを持っているんだってな?」
「あぁ持っているよ。エリックからもらったんだ。でもネック反ってるし、オクターブ合わないし・・誰かに売ろうかと思ってる」
「そうかでは私が貰ってやろう。どうせタダで手に入れたガラクタだろう?」
「おいおいタダは勘弁してくれよ」
「では仕方ない、ジャンクだが50ポンド出そう、それでどうだ?」
「・・・ノークレーム、ノーリターンでお願いします(泣)」
格安で強奪したギターは確かに弾き難く、すぐライブで使うことはできなかった。
その上、2日後のサンディエゴのスポーツアリーナでの公演を最後に、ディープパープルは突然契約を破棄されてクリームのサポートは終了となった。
その2か月後NY公演の合間に、マニーズでブラック/メイプル指板のストラトを入手するも、やはりRが大きなツルツルのメイプル指板に慣れるのは難しく、まずは「III」のレコーディングではローズウッド指板のテレキャスネックのストラトを使うことになったのであった。
リッチー大先生と最初のストラトキャスター
※このギターの入手時期が判明したので、別記事にて訂正します。
先日、勇み足でつい糞耳であることを披露して恥をかいてしまいました。(苦笑)
全曲335と思って聴けば、不思議と335に聴こえてきます。なんでストラトに聴こえたのだろう?
あのアーミングプレイはビグスビーだっかのか。そういわれるとストラトほどヴィブラートにダイナミックさがありません。やはりどんな感じなのか確かめるために、ビグスビーも体験する必要がありますね。
さて、それならあのテレキャスネックのストラトはいつ入手して、何に使っていたのだろうか?と考えてみました。
私はタリエシンのレコーディングが行われた1968年8月より前にロンドンで入手したと思い込んでいましたが、某Masterの見解では、クリームの解散公演の前座として同行したUSツアー(1968年10月17日~20日)の現場にて、Eクラプトンのローディー(ミック・ターナー氏)から購入したのではないかとのことでした。確かにその説の方が自然な成り行きですね。もしレコーディングの時点で使っていたのなら当然ライブでも使うはずですので、やはりまだ入手していなかったのでしょう。
そして私が騙されたアルバムジャケット写真ですが、実は最初に発売された1968年10月のUS盤アルバムには使用されておらず、69年7月のUK盤から使用されたとのこと。あの写真はアルバム制作時ではなくその後のBBCのラジオセッションの録音時に撮影された可能性を指摘されています。さらに白黒のリングザットネックのレアフィルムもその時の撮影と思われる・・・うーむ時系列でつじつまが合いますね。
それを念頭に置いて、1969年1月7日録音のシングル「エマレッタ/バード・ハズ・フローン」、68年のBBCラジオセッションの音源を聴いてみました。
うーむ明らかにそれ以前よりトレブリーでトーンが細い!
アンプの違いもあると思いますが、(私にはストラトっぽく聞こえた)335の音とは違いますね。やはりこれがストラト本来の音なのでしょう。
大先生のインタビューを再読すると「ワウペダルをかけると最高だった」と語っている部分があり、ワウを多用したシングル「エマレッタ」、アルバム「ディープパープルIII」から、あのストラトを使用した可能性が非常に高いことを裏付けています。
話は1968年10月18日、クリームの解散公演の前座の時点に戻りますが、パープルのメンバーは、ロサンゼルスの2日目の公演を見に来たジミ・ヘンドリクスから、クリームのメンバーと共に自宅パーティに招待されています。リッチー大先生がジミとどんなギター談義をしたかは定かではありませんが、それによってよりストラトへのあこがれが強くなったことは間違いないでしょう。
(続く)